「資金繰り表があった方がいいのは分かる。でも、何から手を付ければいいのだろう」。

そんなときは、今月と、その先2か月の入金・支払いを並べるところから始めてみませんか。必要なのは、難しい分析よりも、手元にある資料から「いつ、いくら動くか」を拾うことです。

私が大切だと思うのは、きれいな表を完成させることより、経営者と経理担当者が同じ数字を見て、先の支払いについて話せるようになることです。

1.最初に集めるのは、入金と支払いの予定が分かる資料

まずは、次の資料を集めます。専用ソフトを導入しなくても、Excelや手書きの表から始められます。

確かめたいこと 最初に見る資料
月初に使えるお金はいくらか 通帳・ネットバンクの残高、手元現金
売上代金はいつ入るか 発行した請求書、売掛金の一覧、取引先の入金条件
仕入れ・外注費はいつ払うか 届いた請求書、未払金の一覧、発注・契約の内容
毎月続く支払いはいくらか 給与の支払予定、家賃・リース料などの引落明細
返済やまとまった支払いはいつか 借入金の返済予定表、納税予定、賞与・設備代の予定

請求書がまだ届いていなくても、発注済みの仕入れや決まっている工事代などは、支払いが発生する予定です。「請求書があるものだけ」で考えると、先の支払いを見落とすことがあります。

資料が揃わない項目は、分からないままゼロにせず、「概算」「金額確認中」とメモしておきます。

今月の途中から作る場合は、月初の残高に、今日までの入出金実績と、月末までの予定を足し引きします。 今日の残高から始めるなら、足し引きするのは今日より後の予定だけです。この二つを混ぜないようにします。

2.売上の月ではなく、お金が動く月に入れる

資金繰り表では、「いつ売上になったか」より、実際に代金を受け取る日が大切です。

例えば、今月納品した100万円の仕事でも、入金が来月なら、来月の入金予定に置きます。以前の月に請求した代金も、入金が今月なら今月に入れます。

支払いも同じです。仕入れた月ではなく、代金を払う月に記入します。借入返済、納税、賞与、設備代なども忘れずに並べます。

ここで気を付けたいのが、同じお金を二度数えることです。発注段階で見込んだ支払いに請求書が届いたら、金額を確定させるために置き換えます。請求書の分をもう一度追加するわけではありません。

日本政策金融公庫の資金繰り表の記入例でも、将来の売上に対する回収額、仕入れ・外注費などの支出額、返済予定を月ごとに記入する手順が示されています。

入金予定は、次の二つを分けて考えます。

  • 請求済みで、金額と入金日を確認できているもの
  • これからの受注や売上を見込んでいるもの

後者も見通しには必要ですが、まだ決まっていない売上を、すべて確実な入金として扱わないことです。根拠を一言残しておくと、経営者と経理担当者で確認しやすくなります。

3.不足が見えたら、対策も表に入れて確かめる

前の記事「黒字でもお金が足りない。経営者が知っておきたい資金繰りの落とし穴」では、月末残高が今月20万円、来月は40万円不足、再来月は80万円になる架空例を紹介しました。

その例を引き継ぎ、来月の支払日前に50万円のつなぎ資金を借り、再来月に返済する手配ができたと仮定します。対策後の表は、次のようになります。

架空例・単位:万円

項目 今月 来月 再来月
月初の手元資金 50 20 10
売上代金などの入金 300 330 400
通常の支払い 330 390 280
今回のつなぎ資金の借入 0 50 0
今回のつなぎ資金の返済 0 0 50
月末の手元資金 20 10 80

※通常の支払いには、仕入れ・外注・給与、既存の借入返済、税金などを含みます。今回の借入の利息・手数料は、説明を簡単にするため省略しています。実際にはそれらも支払いに含めて確認します。

来月は、対策前には40万円不足する見込みでしたが、50万円を確保できれば、月末には10万円残る計算になります。再来月はその10万円から始まり、50万円を返済しても80万円残ります。

大切なのは、不足を埋めるお金を入れるだけでなく、その後の返済まで表に入れることです。対策によって、さらに先の月に不足を移していないかも確認できます。

この例は「借りれば解決する」と言いたいわけではありません。入金を早める協議がまとまったなら、元の月から入金予定を移す。投資を延期できたなら、支払いを移す。決まった対応を表に反映し、いつまでお金がつながるかを確かめます。

相談中の借入や、まだ合意していない入金前倒しは、確定した予定とは分けておきます。

4.月末の残高だけで安心しない

先ほどの例では、来月末に10万円残ります。しかし、それだけで来月の支払いをすべて賄えると判断することはできません。

給与や仕入れ代の支払いが先に来て、入金や借入の実行がその後なら、月の途中に不足することがあるからです。

手元資金が薄い月は、入金日と支払日を日付順に並べてみてください。「何日までに資金が必要か」が、月単位の表よりはっきりします。

資金繰り表で見つけたいのは、月末の数字だけではなく、支払いをつなぐための期限です。

5.一度作ったら、予定を実績に置き換える

資金繰り表は、一度作って終わりではありません。

月が終わったら、予定を実際の入金・支払いに置き換えます。その結果を通帳や手元現金と照らし合わせ、残高がつながっているかを確かめます。

予定と違ったところは、理由も一言残します。「入金が一週間遅れた」「仕入れが増えた」「設備代を翌月に変更した」。その理由が分かれば、次の見通しを直せます。

月が一つ終わったら、先の月を一つ足して、引き続き3か月を見渡せるようにします。資金が厳しい時期は、月末を待たず、入出金の予定が変わるたびに見直します。

私は、経営者が一人で全ての数字を集める必要はないと思っています。経理担当者が予定を整理し、経営者が受注や投資の見通しを補い、分からない点は専門家に確認する。その組み合わせで、表は実際の判断に使えるようになります。

まずは、直近の入金予定と支払い予定を一枚に並べてみてください。分からない箇所が見つかることも、自社のお金を把握するための前進です。

参考資料

資料確認日:2026年10月12日。3か月から始める提案、確認表、数値例と対策後の試算は、本記事で作成したものです。