「誰に継いでもらうか」が決まっていないと、事業承継の話は進められないように感じるかもしれません。でも、相手が現れるのを待つだけでは、話は始まりません。自社の仕事が、何によって成り立っているかを書き出すことが、引き継ぐ相手を探す第一歩になります。
事業承継の準備を、まずは「次の人が事業を続けるために必要なものを見える形にすること」と考えてみます。すべてを整理し終えてから相手を探す必要はありません。整理しながら、誰と事業の将来を話すかも考えていきます。
引き継ぐのは、会社の名前や設備だけではない
商品や機械だけでなく、取引先との関係、従業員の技術、日々の仕事の進め方も事業を支えています。たとえば、主要な取引先との約束を経営者だけが把握しているなら、その内容も引き継ぐべき情報です。
中小企業庁の事業承継ガイドラインも、承継するものを「人(経営)」「資産」「知的資産」の面から捉え、準備の段階で経営状況や課題を見えるようにすることを示しています。ここでいう知的資産には、特許だけでなく、技術やノウハウ、取引先とのつながりなども含まれます。
まずは一枚に、三つのことを書く
最初から詳しい計画書を作る必要はありません。紙やメモに、次の三つを書いてみます。
- 続けたい仕事:主な商品・サービスは何か。どの取引が事業を支えているか。
- その仕事を担う人:誰が重要な作業や顧客対応をしているか。手順がその人だけにしか分からない仕事はないか。
- 確認したい資産・契約:事業に使う建物や設備、借入れ、主な契約について、名義や書類の場所を把握しているか。
分からないところは空欄のままで構いません。「契約書の場所を確認する」「設備の名義を調べる」と書けば、それが次にすることになります。この段階では、会社や経営者個人の資産がどう引き継がれるかを決める必要はありません。
書き出すことが、相手を探す始まりになる
引き継ぐ相手は、親族、従業員、社外の人など、これから考えることができます。書き出した内容があれば、事業を続けたい理由や、引き継ぐ人に担ってほしい仕事を具体的に話せます。話す中で分からないことが見つかれば、また整理すればよいのです。
自分だけで考えにくい場合は、福島県事業承継・引継ぎ支援センターにも相談できます。後継者が決まっていない段階でも相談でき、センターへの相談は無料です。相談は予約制です。
まずは三つの欄のうち、一つだけ埋めてみてください。そして、この事業の将来について、誰と最初に話すかを考えてみましょう。後継者が決まるのを待たずに動き始めることが、相手を探す出発点になります。
