「生成AIを使ったほうがいいのか。でも、周りは使っているのだろうか」。経営者から、こうした疑問を聞く機会が増えました。
実際のところを、調査の数字で確かめてみます。使うかどうかを決めるのは、周りの様子を知ってからでも遅くありません。
福島県内では、約3割の企業が使っている
民間調査会社の帝国データバンクが、2026年3月に福島県内の企業に尋ねた調査があります。生成AIを業務で「活用している」と答えた企業は、29.5%でした。同じ時期の全国調査では34.5%なので、福島県内は、全国をやや下回っています。
| 対象 | 活用している企業の割合 |
|---|---|
| 福島県内の企業 | 29.5% |
| 全国の企業(全体) | 34.5% |
| 全国・大企業 | 46.5% |
| 全国・中小企業 | 32.4% |
| 全国・小規模企業 | 28.0% |
出典:帝国データバンク「福島県・生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」から作成。「非常に」または「やや」活用していると答えた企業の割合。県内の調査は回答132社と規模が小さく、全国との差は目安です。
全国の数字を企業の規模別に見ると、大企業は46.5%、中小企業は32.4%、小規模企業は28.0%です。規模が小さいほど、活用している割合は低くなっています。
ただし、県内の調査は、270社に依頼して回答が132社という、小さな調査です。全国との差は、目安として受け取ってください。「3割が使っている」は、「7割は使っていない」ということでもあります。
使い道は、書く仕事と調べる仕事が中心
何に使われているのでしょうか。福島県内の調査では、「文章の作成・要約・校正」が最も多く、「情報収集」「データの集計・分析」が続きました。
全国調査では、活用している企業のうち、45.1%が「文章の作成・要約・校正」に使っています。次いで「情報収集」が21.8%、「企画立案時のアイデア出し」が11.0%、「データの集計・分析」が7.4%です。
別の調査も見てみます。中小企業基盤整備機構が、全国の中小企業を対象に、2025年11〜12月に行った調査(回答1,647社)では、AIを導入している企業は20.4%、導入を検討している企業は18.6%でした。導入している企業が使っている分野は、総務・管理が68.3%、営業・販売・サービスが60.3%、経営・企画が58.5%です。AIの種類では、生成AIが82.6%を占めます。
調査によって、質問の仕方や時期が違うので、数字を直接は比べられません。ただ、共通して言えるのは、使い道の中心が、文書づくりや調べもの、事務のような、机の上の仕事だということです。
効果は感じられている。ただし、「感じている」
効果についてはどうでしょうか。福島県内で活用している企業のうち、77.0%が「業務への効果が出ている」と答えています。中小企業基盤整備機構の調査でも、導入している企業の83.2%が、「業務効率化・作業時間短縮」の効果を感じていると答えました。
注意したいのは、これらが、企業の「自己評価」だということです。どれくらい時間が減ったかを測っているのか、感覚なのかは、調査の数字からは分かりません。
悪影響やトラブルについては、福島県内の調査で、「ない」が64.1%で最も多くなっています。一方で、「使いこなし格差の拡大」を挙げた企業も、15.4%ありました。同じ会社の中で、使える人と使えない人の差が開く、という悩みです。
心配されているのは、「どの業務に使うか」
県内の企業が、生成AIの活用で心配していることの1位は、「活用すべき業務の範囲」で、54.5%でした。「情報の正確性」「専門人材・ノウハウ不足」などが続きます。調査をまとめた帝国データバンクは、社内ルールの整備や教育体制の構築が課題だとしています。
中小企業基盤整備機構の調査では、AIを導入した企業が直面した課題として、「導入にあたっての高コスト」が46.9%、「社内のAIノウハウ不足」が42.0%、「社内のAI人材不足」が38.8%でした。
使っている企業でも、「何に使えばいいのか」「誰が教えるのか」で悩んでいます。ツールの性能より、使う側の準備が、悩みの中心です。
筆者の見方:「使うか」より「どの仕事の何を減らしたいか」
ここからは調査の数字そのものではなく、筆者の見方です。
県内の企業が、最も悩んでいるのが「活用すべき業務の範囲」であることは、示唆的です。生成AIを使うかどうかを考える前に、自社のどの仕事の、どの手間を減らしたいのかを決める必要がある、ということだからです。
これは、AI・業務改善の1本目の記事で書いた考え方と、同じところにつながります(AIを使う前に、毎日くり返す仕事を一つ見つける)。どんなに便利な道具でも、何に使うかが決まっていなければ、効果は測れません。
また、調査では、使っている企業の多くが「効果がある」と答えています。それは、使うほうがよいという意味ではなく、「効果が出やすい仕事を選んだ企業が、使っている」可能性もあります。周りの数字は、判断の材料の一つとして、控えめに受け取るのがよいと思います。
例えば、こんな仕事から使ってみる
では、身近な仕事では、どんな使い方が考えられるでしょうか。ここでは、特別な仕組みをつくらなくても試せる例を三つ挙げます。実際の企業での導入実績ではなく、使い方をイメージするための例です。
お客様へのお知らせ文をつくる。 例えば飲食店なら、臨時休業の日時や伝えたい内容を箇条書きにして、「お客様向けに短く丁寧な案内文にして」と頼みます。AIに下書きを任せ、日付や営業情報、言い回しは店主が確認します。
会議メモを整理する。 話し合いで取ったメモを、「決まったこと」「次回までにやること」「まだ決まっていないこと」に分けてもらいます。AIが書いた内容が実際の発言や決定と合っているかは、参加者が確かめます。
値上げを考える材料を増やす。 架空の売上や原価を設定して、「値上げを検討するときの論点と、見落としがちなリスクを挙げて」と尋ねます。AIには別の視点を出してもらい、値上げするかどうかの判断は経営者が行います。
最初は、取引先名やお客様の個人情報を入れずに試すこともできます。大切なのは、AIの答えをそのまま使うことではなく、下書きや考える材料として使い、人が内容を確かめることです。手間がどれだけ減ったかも、実際に測ってみて初めて分かります。
使うか迷ったときの、三つの問い
使うかどうかを決める前に、次の三つを、自社に当てはめて考えてみてください。答えは、紙に書かなくても構いません。
この1か月で、いちばん時間を取られた「書く・まとめる」仕事は何か。 調査で最も多い使い道が、文章の作成・要約・校正でした。まず、自社の「机の上の仕事」の中に、手間の大きなものがあるかを探します。なければ、今は使わないという判断も、立派な選択です。
その仕事に、お客さんや取引先の情報が入るか。 入るなら、情報の扱い方を先に決める必要があります。生成AIに、どんな情報を入れてよいかは、別の記事で整理する予定です。
試すなら、誰が、いつまでに、何がどれだけ減ったら続けるか。 「効果がある気がする」で終わらせないために、減らしたい時間を、先に決めておきます。1か月試して、効果が測れなければ、やめるという選択肢も用意しておきます。
参考資料
- 帝国データバンク:福島県・生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)(2026年3月17〜31日、福島県内の企業270社に依頼、有効回答132社)
- 帝国データバンク:生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)(2026年3月17〜31日、全国23,349社に依頼、有効回答10,312社)
- 中小企業基盤整備機構:中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)(2025年11月17日〜12月12日、全国の中小企業10,000社に依頼、AI導入状況の設問は1,647社が回答)
資料確認日:2026年10月31日。帝国データバンクの調査は、インターネットによる民間調査で、福島県内の調査は回答132社の小さな調査です。調査ごとに、質問の仕方、対象、時期が違うため、数字は直接は比べられません。「使い道は机の上の仕事が中心」は、筆者による調査の読み取りです。「使うか」より「どの仕事の何を減らしたいか」は、筆者の見方です。
