「去年より忙しかったのに、決算を見ると思ったほど利益が出ていない」。そんなとき、売上だけを見ていても理由は分かりません。まずは、同じ期間の売上高・売上総利益(粗利)・営業利益を並べてみます。

難しい分析を始めるためではありません。利益がどの段階で小さくなったのかを見つけ、次に確かめることを一つに絞るためです。

売上が600万円増えても、営業利益が70万円減ることがある

下の数字は説明のために作った架空の事業者の例です。単位は万円、前期と今期は同じ長さの期間とします。

前期 今期 増減
売上高 3,000 3,600 +600
売上原価 1,950 2,520 +570
売上総利益(粗利) 1,050 1,080 +30
販売費・一般管理費 900 1,000 +100
営業利益 150 80 △70

売上は600万円増えました。しかし、売上原価も570万円増えたため、粗利は30万円しか増えていません。さらに、販売費・一般管理費が100万円増え、営業利益は70万円減りました。

この表だけで「値付けが悪い」「人件費が高い」とは決められません。分かるのは、売上の増加が、そのまま利益の増加にはつながっていないということです。

3つの数字は、何を教えてくれる?

今期の数字をたどる (架空の例)
①売上高3,600 万円
− 売上原価2,520 万円
②売上総利益(粗利)1,080 万円
− 販売費・一般管理費1,000 万円
③営業利益80 万円

① 売上高は、商品やサービスの販売として計上した金額です。増えたら、次に「何が増えたか」を見ます。商品、取引先、案件の数、単価のどれが変わったでしょうか。

② 売上総利益(粗利)は、売上高から売上原価を引いた金額です。仕入れや材料費など、売上を得るために直接かかった費用を引いた後に、どれだけ残ったかを示します。例では粗利率(粗利÷売上高)が前期35%、今期30%に下がっています。売上が増えた仕事の原価や、値引き・追加作業の有無を確かめる手がかりになります。

③ 営業利益は、粗利から販売費・一般管理費を引いた金額です。ここには事務所の家賃、販売や管理に関わる人件費などが含まれます。例では粗利が30万円増えても、この費用が100万円増えています。「何に使ったか」「一時的な支出か」「売上増に必要な支出だったか」を確認します。

自社の数字では、ここから始める

直近の決算書、または月次の試算表を用意し、前年の同じ期間と比べます。期間の長さが違う数字をそのまま並べると、変化を読み違えます。

  1. 売上高・粗利・営業利益を、前期と今期で並べる。
  2. 粗利率も計算し、「売上が伸びた仕事で粗利は残ったか」を確かめる。
  3. 粗利が伸びているのに営業利益が減った場合は、販売費・一般管理費の増えた項目を一つ選んで確かめる。

一度に全てを解決しようとせず、たとえば「売上が大きく増えた上位3件は、見積もった原価と実際の原価がどう違ったか」と問いを小さくします。次の月に確認する数字も決めておくと、見直しが続けやすくなります。

なお、原価に含める費用は業種や会計処理によって異なります。途中で費用の計上方法を変えた場合も、単純に前期と比較できません。個人事業主の決算書では、法人の損益計算書と同じ「営業利益」の欄がない場合があります。そのときは、売上から原価・事業に必要な経費を引く流れを確認し、数字の対応が分からなければ帳簿を作成した人に確かめてください。

中小企業庁の小規模企業白書も、原価構成や利益の把握を価格設定の準備として取り上げています。価格を変えるか、仕事の進め方を変えるか。その判断は、どこで利益が減ったのかを見てから考えたいところです。

ここまでで、利益がどの段階で減ったかを数字で追えるようになりました。次は記事「売上が増えると費用はいくら増える? 変動費と固定費の見分け方」で、売上と一緒に増える費用と、売上が変わってもすぐには減らない費用に注目します。この違いが見えると、「売上をもう少し増やせば利益が出るのか」を考えやすくなります。