記事「売上は増えたのに、利益が残らない。まず見る3つの数字」では、売上が増えても利益が増えるとは限らないことを、売上高・粗利・営業利益で確かめました。では、売上をもう少し増やしたら、費用はどのくらい増えるのでしょうか。
この問いを考える入口が、変動費と固定費です。名前を覚えるよりも、まずは「仕事が一つ増えたとき、この費用も増えるだろうか」と考えてみます。
10個多く売れたら、何が増える?
次は説明のために作った、架空の小さな店の例です。同じ商品を1個1,000円で売り、売れた商品1個につき仕入れに400円かかります。店舗の家賃は月10万円とし、ほかの費用はここでは省いています。
| 1,000個売れた月 | 1,010個売れた月 | 増減 | |
|---|---|---|---|
| 売上 | 100万円 | 101万円 | +1万円 |
| 売れた商品の仕入れ | 40万円 | 40万4,000円 | +4,000円 |
| 店舗の家賃 | 10万円 | 10万円 | 変化なし |
10個多く売れると、売上は1万円増えます。同時に仕入れも4,000円増えます。一方、この範囲では家賃は変わりません。増えた売上1万円のすべてが残るわけではなく、仕入れを引いた6,000円が、ほかの費用を払う前に残ります。
ここでは販売数だけを変えました。同じ売上増でも、値上げで増えた場合や、仕入れ値が変わった場合は結果が違います。自社で考えるときは、売上が「数量」と「単価」のどちらで増えたかも確かめます。
費用は、売上との動き方で見る
変動費は、販売数や仕事量が増えると一緒に増えやすい費用です。例の店では、売れた商品の仕入れが当てはまります。注文ごとに発生する材料費、外注費、配送費なども、その仕事の増減に合わせて動くなら変動費として考えられます。
固定費は、売上が少し増減しても、当面は大きく変わらない費用です。例では店舗の家賃です。毎月一定額の給料や、月額契約の費用も、短い期間では固定費として考えやすいでしょう。「固定」という名前でも、契約の変更や人員の増減があれば金額は変わります。
決算書の「売上原価」と「販売費・一般管理費」は、費用を並べる場所です。「変動費」と「固定費」は、売上や仕事量が変わったときの動き方で見る分け方です。売上原価がすべて変動費、販売費・一般管理費がすべて固定費、とは限りません。
自社の帳簿では、まず三つの費用から
直近の数か月の試算表や経費の明細を見て、金額の大きい費用を三つ選びます。一度にすべてを分類する必要はありません。
- その費用は、注文や販売が一つ増えると追加で発生するか。
- 売上が少ない月にも、同じくらいの金額がかかるか。
- 判断に迷う費用は、売上や仕事量が違う月の金額を並べてみる。
たとえば人件費でも、毎月定額の給料と、仕事量に合わせて増える勤務時間分では動き方が違います。一つの費目に両方が含まれることもあります。すぐに分けられないものには印を付け、まずは動き方が明らかな費用から整理しましょう。
中小機構の費用の固変分解に関する資料も、売上との関係を見て、迷う費用は過去の月の数字を比べる方法を紹介しています。J-Net21の小売業向け解説では、給料も支払い方によって変動費・固定費の分け方が変わる例を示しています。
費用の動き方が見えてくると、売上を増やしたときに固定費へ充てられる額を考えやすくなります。記事「同じ100万円の売上増でも、残る額は違う」では、二つの架空の会社を比べてみます。
